ProtoStarサロンのイベントでは株式会社POLの加茂氏とBEENEXT前田ヒロ氏をお招きしてイベントを開催した。

イベントレポートの前にお二人のプロフィールを確認しておこう。

<登壇者紹介>

加茂 倫明氏 株式会社POL代表取締役CEO

東京大学教養学部2年生。高校時代から起業したいと考え始め、その後ベンチャー数社で長期インターンを経験。2015年9月からは半年間休学してシンガポールに渡り、REAPRAグループのHealthBankにてプロダクトマネージャーとしてオンラインダイエットサービスの立ち上げを行った。その後2016年9月に株式会社POLを創業。

現在は理系人材領域、研究領域といったアカデミア領域へテクノロジーを用いて食い込んでいくLabTech(ラボテック)領域で、理系学生をターゲットにしたダイレクトリクルーティング・プラットフォーム「LabBase」を展開し、著名な投資家から支援を受け事業拡大を進めている。

前田ヒロ氏 BEENEXT Managing Partner

日本をはじめ、アメリカやインド、東南アジアを拠点とするスタートアップへの投資活動を行うグローバルファンド「BEENEXT」マネージングパートナー。2010年、世界進出を目的としたスタートアップの育成プログラム「Open Network Lab」をデジタルガレージ、カカクコムと共同設立。その後、BEENOSのインキュベーション本部長として、国内外のスタートアップ支援・投資事業を統括。2016年には『Forbes Asia』が選ぶ「30 Under 30」のベンチャーキャピタル部門に選出される。世界中で100社を超えるスタートアップに投資を実行。過去の投資実績は、SmartHR、Kurashiru、Fril、Qiita、Fond、WHILL、Giftee、Viibar、Locari、Voyagin、Instacart、Kamcord、Everlane、Thredup、Screenhero、Lob等。

イベントは両者の自己紹介の後どうして今のキャリアを選択するようになったのかという話からオープニングトークがスタートした。

(以下敬称略)

加茂:僕は両親が共に大学勤務者ということもあり、幼少期から研究室などに触れる機会が多く、大学という環境には親しみがありました。同時に高校生の頃から起業したいと思うようになり、インターンで実務経験を積んだ後、POLを創業しました。

前田:私は8年間程シードフェーズに投資しています。元々ザッカーバーグに憧れて、20歳頃に学生起業し多くの事業を作るもすべて失敗しました。”なぜうまくいかないのか?”と悩んでいる時に経営者の友人から”一度投資家になって、投資を通して起業家スキルを磨いてみたら?”とアドバイスを受けたこともあり投資家になりました。いろいろな会社に投資していく中で自分よりも優秀な起業家が山ほどいることを痛感して、これは起業家としてまともに戦ってもこの市場では勝ってゆけないと思い、一生支援する側に立って投資家としてやりきることを決断しましたね。現在ではインド、インドネシア、トルコ、ベトナム、日本、アメリカという国々を毎日飛び回って投資先を探している日々です。

それでは具体的に対談の内容に入っていこう。当イベントでは起業家の加茂さんと投資家の前田さんの経験に基づいて、双方の視点からスタートアップ創業時に大切なことについてお話いただいた。まずは加茂氏がPOL創業期の5つの学びをシェアしてくれた。

当日登壇直前までコーヒーショップで考え込んだ5つの学び、1つずつ見ていこう。

POL創業期の5つの学び

その1 時期:サービスリリース期 目的:仮説検証と顧客獲得

「ジャブを打つ。返ってきたら会いまくる。」

加茂:スタートアップがよくやりがちなミスで、最初から完璧なプロダクトを出そうとしてしまうという傾向がある。そうではなくて初期段階では未完成な状態でいいからターゲットユーザーにどんどん見せて、フィードバックを貰って改善し続けるというスタンスが良いと思う。

実際POLは製品をまだ開発し始めていない状態の時に、「こんなサービスがもうすぐリリースされます!事前登録募集開始しました!」という風にプレスリリースを打ちました。開発し始める段階でターゲットユーザーの生の声を聞きながらプロダクトをつくっていったことによって、初期に自分たちが持っていたアイデアがどんどんブラッシュアップされていくので非常に良かった。

さらにはこれが結果的に初期の顧客獲得成功の要因にもなっている。プロダクト開発の初期段階で反応してくれるような人たちはアーリーアダプターで、親身にアドバイスをくれるし、現時点で完全に満足できる水準じゃなくても今後の成長に期待して契約してくれたり、お客さんを紹介してくれたりなど、自社の良いファンになってくれる。

前田:加茂さんにすごく同意。半年〜1年という時間をかけてプロダクトをつくったのに全然使う人がいないというのはよくあるケース。重要なのは自分がつくりたい価値が、世の中に必要とされているかを常に考えること。アインシュタインの名言で「時間の上手な使い方は、90%を課題について考えるべきで、10%をソリューションにかけるべき」というものがあるが、起業家もこれは非常に当てはまるのではないか。

その2 時期:サービスリリース直後 目的:リソース拡充による加速

「事業と組織は両輪。片方が止まったら前に進まない。」

加茂:共同創業者/取締役の吉田さん*から学んだ部分。起業当初は事業側面にばかり目が行きがちだったところを指摘され、事業と同じくらい組織も大事だということを学んだ。当時は組織図を書いても全部署が自分の名前で埋め尽くされている兼任だらけの体制だったため、スピードが遅く、逆にそこが解消されてからは事業開発速度は大幅に早まった。自分と近い覚悟を持って取り組めるメンバーが何人いるかで大きくスピードが変わることを痛感した。*吉田行宏氏元ガリバーインターナショナル(現IDOM)の元専務取締役。

前田:投資家の目線からみて、素晴らしいスタートアップと平凡なスタートアップを何が分けるかというと組織力。組織力と言っても色々あるが、一番重要だと思うのは社員一人ひとりが会社の向かう方向を把握しているかどうか。そしてその戦略の中で自分はどんな役割をもっているかを把握していること。それが出来ている会社は事業がどんどん進んでいって組織が追いつかない。なので、良い意味で採用が追いついていないという状態が良いシグナルであると考えている。

その3 時期:サービスリリース直後〜 目的:社長工数ボトルネック問題の阻止

「情報と権限を与えて育てる。ただし委任≠放任」

加茂:スタートアップにおいては基本的に社長が一番成長する。それは社内の最新情報を握ってかつ投資家を含む外部の有識者などとディスカッションする機会が多く、考えが常にブラッシュアップされるから。一方で社員も成長はするものの、ハイスピードで伸びていく社長との間には能力や想いの部分で乖離が起きてしまう場合がよくあるんじゃないかと。そうすると全社戦略レベルの話をできるのが社長だけになってしまい、社長の工数がボトルネックになって事業の成長速度が頭打ちになってしまいがち。そのため社員に対しても積極的に情報と裁量をある程度与えることで、社員を成長させることが可能になると思う。ただ、裁量権を与える、任せるといっても、委任と放任は異なる。委任はその人ができる範囲+αぐらいの仕事を任せることで、常に相手の容量・スキルに合わせたマネジメントをすることで、これが非常に重要。任せた後も、「自走するのが理想」だからといって任せて放置じゃなくて、「致命的な未達にならないか」「良くない悩みを抱えていないか」などをウォッチしながら、必要であれば介入・支援することが大事だと思う。

前田:(前述の話を受けて)これは非常にいいと思う。理想の状態は社長がコーチのような立場でいること。社員は一人ひとりがプレーヤーであると同時にある程度の責任をもっているべきで、悩んだ時にはしっかりと社長が介入してフィードバックをしてあげるというのが良い状態。なので優秀な社長というのは暇であることだと思う。社長は会社全体のすべての領域について常に考える必要があるため、極力目の前のタスクは社員に委任して考えることに時間を費やすべき。そのため安心して委任できる社員の存在がかなりキーになってくるため、社長は人の部分、採用にできるだけエネルギーを多く割くべき。実際自身の投資先を見てみても、いい会社はこういった舵取りをしている印象がある。

その4 時期:常に!(創業準期〜) 目的:学習効率化・落とし穴回避

「分からないことばかりで当たり前→周りに頼りまくる」

加茂:やはり初めての起業ということもあり、正直わからないことだらけ。創業手続きから資本政策に至るまで全部素人。それらをすべて自己解決しようとするのはナンセンスで助けてくれる人に積極的に頼るべき。特に資本政策などの不可逆なものについては、自分が無知であることと失敗するリスクを認識した上で、詳しい人や先輩起業家などに相談した方が良いと思う。前田:

良い経営者は“みんなお願い上手”で必要な情報を巧みに取っていく力がある。どんな経営書を読むよりも実際の経営者から聞いた方がいいに決まっているから、そういった意味で人にどんどん頼っていく姿勢は好ましいかなと。

あとは投資家選定みたいな話で言うと“投資家のデューデリ”はうまくいっている会社を見るよりも上手くいっていない会社を見るべきということが言える。上昇している時は当然みんな幸せで、まして投資家は大満足。ただ、ちょっと落ち目の時、つまり感情的な部分がでるようなシーンでどういった対応をする投資家なのか、という情報は起業家にとってはかなり大きな判断材料になるので注視しておくといいかもしれない。

その5 時期:常に!(創業準備期〜) 目的:安定的なパフォーマンス向上

「体調と精神衛生の管理は重要な経営課題」

加茂:色々な起業家と会っている中で、見るからに疲れているいわゆる「ネガティブオーラ」みたいなものを発している人は少なくない。そうするとやっぱりいい人を巻き込みづらいし、デメリットしかないので精神管理は重要。自分も経験があるが、社長が倒れて何日も休んでしまうというのは非常に会社にとってよくない。体調管理は緊急性は低いが重要性は非常に高いので、きちんと寝るとか週2回はジムにいくとか習慣としてマネジメントする必要がある。何かの研究で睡眠時間とリーダーシップって相関があることが立証されてるようで、自分も翌日重要なミーティングがある場合はしっかり寝るようにしたりと工夫をしている。

前田:まったくもってその通り。やっぱりエネルギッシュな人、目がキラキラしている人には魅力を感じるから、起業家も投資家も惹き付けられる。友達選びも実は重要で、エネルギーを吸い取ってしまう人ではなく、与えてくれる人と多く過ごした方がいいに決まっている。話した後に元気が出るとか、スッキリするとか、そんな人といるべき。だからエネルギーを常に維持できるように精神・体調管理は重要。あとよくあるケースが”4年目”に疲れが出るパターン。会社としてはもっと上を目指せるのに、目標を下げたり売却してしまったりしてしまうのは大体トップが疲れてしまった時。実際に投資先の起業家には2~3年目辺りになると「最近いつ休んだ?」とこまめに聞くようにしている。

<まとめ>

立場は違えど、現在進行形で事業拡大をされている起業家の加茂氏と前田氏の二人には双方の視点から素晴らしい知見の数々を披露していただいた。

イベント当日はあいにくの大雨だったのだがそんな中でも、会場に足を運んで下さった参加者は二人のリアルな体験とそれに紐付く行動に目からウロコだったようである。事実イベント後の交流会では参加者が二人との会話を順番待ちするほどだった。

なお、質疑応答を含む同イベントの映像はProtoStarサロン会員になることで視聴することが可能になります。

 

Related Posts