当記事はProtoStarサロンのイベントを記事化したものである。

スタートアップ支援

登壇者紹介

沼倉 正吾氏 DVERSE Inc. CEO
1973年生まれ。秋葉原のパソコン販売店を経て、97年、エックスタイムジャパンに入社。2000年、取締役に就任。01年、親会社である有楽股份へ出向し、台湾家電量販店12店舗の設立や運営を担当する。04年、ナスカークラフトを設立し代表取締役に就任。ゲーム開発や企業向け広告・動画配信システムの開発を手掛ける。13年、ゼネテックに入社し新規事業部長を務めた後、14年、VRを専門とするDVERSE Inc.を米デラウェア州に設立する。現在は建築・土木業界向けVR制作ソフトウエア「SYMMETRY」(シンメトリー)の開発に力を注ぐ。(以下発言は敬称略)

教科書にはない泥臭い話

沼倉:「DEVERSE Inc(ディヴァース)CEOの沼倉正吾です。

沼倉:今日の話としては、”数億円の調達!”というよりもいわゆる“普通のスタートアップ”のような皆さんが聞きたいことを伝えられればと思っております。なので、あんまり教科書的な話よりも泥臭いリアルな話をできればと思っています!」

どのようにしてスタートアップの世界へ足を踏み入れたのか

沼倉:小さい頃かITやSFが好きだったこともあり、仕事もIT関連へ進みました。2008年に転機が訪れます。

沼倉:スタートアップのピッチは、殺伐とした雰囲気になるものが多いのですが会場を笑いに変えるプレゼンをしていた起業家と出会いました。これは面白いと思い、そのままスタートアップの世界へ進みました。

SXSWでの出会い

沼倉:その後2012年には「SXSW」(サウス・バイ・サウスウエスト)という当時は現在ほど盛んでなかったもののイノベーター気質な面白い日本人が集まっていたアメリカの一台見本市のイベントのため渡米しました。

「元々ITとかSFが好きなので、自分でそんな未来を作りたいという想いはありますね。あとは他のサービスを使うよりも自分のサービスをつくってやりたいから。」

その後は企業向けターゲティング広告の配信システムを構築し、業界では大きな注目を集める。しかし軌道には乗らず、最終的には自己破産を申請した。

自己破産中に触れたVRに衝撃を覚える

「一社目は上手く行かず自己破産をしたわけなんですけど、それでガックリ落ち込む…かと思いきやそんなわけがなかったんです(笑)」と語る沼倉氏。更にこう続ける・・・。

「ちょうど自己破産の手続き中に”Oculus Rift DK1”が届いて、これは凄いぞと大はしゃぎで。もう(破産)手続きそっちのけでどうにもこうにもVRの仕事がしたくなったんですよね。もう会う人全員にVRゴーグルをかぶせまくって映像を見せたりして・・・。 結局それが今の事業になっているわけです。」

そんな心境になるのだろうか・・・そう感じる読者の方も多いだろう。しかしこの続きを読むと沼倉氏の行動原理が理解できる。

好きなこと・やりたいことが一番大切

沼倉氏は取り組むテーマが好きなことが・やりたいことであることが重要であると語る。

「よく“小説家が第一作目を書き続ける”というけれど、僕ら起業家もそうだと思っていて。なにか過去に印象的な原体験があって、これいいなと思ったことを永遠にやり続ける。だから、ただやりたいことをやりつづけるために色々と試行錯誤しているだけなんです。だから僕らがやっていることは特別なことでもなんでもなくて、別に特別な能力なんて必要ないですよ。」

何をするにしろ、根底には“好きなことをやっている“という感覚があって。たとえば起業するにしろ、投資を受けるにしろ、それらはやっぱあくまで過程で、むしろ好きなことをやるために仕方なく色々とやっている感じですかね。

そういう感覚でいるので、たとえお金がなくても家がなくても、むしろこの時期が一番面白いと思えるんです。スタートアップの領域も色々あるけど、やっぱり“好きだからやめられない“ということをやるといいんじゃないかなと個人的には思います、と沼倉氏は続ける。

スタートアップの世界に“失敗”はない

Yコンビネーターのポール・グレアムの言葉に”スタートアップには解決に天才を要するような魔術的で困難な部分は何もない”という有名なものがあるが、沼倉氏は自身の体験からこれに同意するという。

「もしスタートアップが失敗するとしたら、それは単純に諦めた時なんです。めげてしまえばそれは失敗になってしまう。逆にめげさえしなければ失敗ではない。これはいま成功している会社すべてに共通して言えることだと思います」

具体的に40回と書かれたスライドを挙げてこう続ける。

「たとえばGoogleだって最初の調達をうけるまでに350回ピッチをしている。Amazonも60回くらい。どちらも当時は当初全然評価は高くなかった。その中でもめげずに頑張ってきたから”巨人”と称されるような今の姿があるわけですよね。で、こちらの画面に書いてある”40回”いう数字ですが、これが何の数字かといいますと…僕らが最近調達した時に成功しなかったのピッチですね。」

しかもこれは投資家にピッチを行った回数ではなく実際に調達の為にチャレンジした社数だそう。

「だからピッチ回数は100回とか超えてるかもしれないですね。冒頭で”数億円調達した企業”なんて紹介していただきましたけど、別にだからといって次から次へとオファーが来るわけでも何でも無くて相変わらず昔と同じように、やってはダメやってはダメってことを繰り返しているわけですね。ピッチをしたって大体が”ご検討をお祈りします”なんてお祈りメールを貰うわけですよ。」

こうした沼倉氏の生々しい起業家の姿に、驚いた方も多かっただろう。

沼倉氏は今後のピッチに関してこう続ける。

「たとえこれから何十億とかの話になったって規模が大きくなるだけで、日々やることには関係ない。淡々とやるだけです。調達額が大きいから偉い、小さいからそうでないとかなんてことは当然ないです。単にこれからやろうとしていることにお金がかかってしまうから調達するしかないというだけなんです。

最後に沼倉氏はこうした自身の経験を元にこう締めくくった。

「(プレゼンなど)今うまくいっていなくても、諦めにずに頑張って欲しいというのが僕からのメッセージですね」

まとめ

一見華やかにも見えるVR業界で注目を集める沼倉氏だが、このように実はかなりの修羅場をくぐり抜けてきており一つ一つのストーリーには非常に深みを感じた。沼倉氏のリアルな体験には会場に集まった参加者も前のめりに聴き入り、何度も真剣な表情と笑いが交差して発生した。

講演が終了すると多くの参加者が沼倉氏にモチベーションの源泉や過去の体験などに関して質問をしていた。

 

なお質疑応答を含めた講演の内容を全て見たい方は下記画像リンクよりサロン会員にご登録いただくと視聴可能になります。

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